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2020.05.22

【経営コラム】会計事務所が中小企業のCFOになるためには

弊社代表松原が会計人向けニュースメディア「KaikeiZine」にて連載をしているコラムを掲載しております。


非常事態宣言に基づく自粛により、日本国内の爆発的な感染者増はひとまず抑えられた。しかしながら、ワクチンが全国民に行き渡るまでにはまだまだ時間がかかることから、withコロナとしての経済活動をどうしていくかが当面の課題である。体力のない中小企業から先に淘汰されるのは残念ながら不可避であるが、その後大企業の大型倒産が続き、ひいては金融システムの崩壊に至る、という最悪のシナリオをどこまでで止められるかが焦点となる。

このような外部環境の中、会計事務所は今後どうなっていくのだろうか。私は、会計事務所が顧問先の業績改善に寄与出来なければ、ますます存在価値が低下し、そのスピードは加速すると考える。既に、コロナ関連の融資、補助金助成金などの情報提供が無い会計事務所へのクレームが増加しているとの声を多方面で聞いている。

では、実際に会計事務所は顧問先の業績を良くできるのであろうか。私は確信を持ってYESと言える。なぜなら私たちの会計事務所の顧問先の業績は確実に良くなっており、その実績は無数にあるからである。会計事務所は利益の構造が分かる。だから財務上の課題がどこにあるかを明確に把握することが出来る。ただし、業績改善を行う主役は経営者。会計事務所はあくまで黒子である。ではどうやって黒子として貢献するか。私たちの答えは、財務をベースとしたコーチングである。

私たちのターゲットは創業から売上10億円までの中小企業である。どんぶり勘定の経営でも営業力や技術力を活かして売上2億円ぐらいまでに成長させることは可能であろう。しかしながらそれ以降は、経営の結果をあらわす財務数値=事実、を意識しながら経営をしないと必ず伸び悩む時期がやってくる。財務数値、例えば売上とコスト、単価と数、新規とリピート、商品ごとの収益性、得意先ごとの収益性、従業員ごとの生産性、などの切り口によって改善ポイントを認識し、PDCAを回していく。会計事務所が財務の視点、論理的な思考、客観性を活かし、コーチングの技術を使って経営者から答えをひっぱってくる。その答えに対して壁打ち相手となりブラッシュアップしていく。アクションプランを立てて、やりっぱなしにしないように毎月フォローして軌道修正をかけていく。これで成果は十分出せる。

会計事務所が顧問先の経営支援をする際の最大のポイントは何か。それは、答えを会計事務所側が教えなくてもよい、というパラダイムシフトだと私は思う。コンサルティングは知識を持っている人が具体的なやり方を教えるものだと考えられている。確かにそうだろう。実際に会計事務所は税務会計分野において専門的知識で顧問先に答えを教えている。ではコンサルティングじゃないと顧問先の経営支援は出来ないのか。いや、コーチングでも十分成果を出せる。

プロのスポーツ選手をイメージしてみよう。プロ野球選手やプロゴルファーにもコーチがいる。コーチは常に新しいことを教えているのではなく、信頼関係をもって傍にいて、対話によって気づきを与え、時には叱咤激励して選手を勇気づける。中小企業の経営者もプロスポーツ選手同様その道のプロである。中小企業の経営者は会計事務所に経営の答えを教えてほしいなんて思っていない。ヒントがあれば十分だ。それぐらい中小企業の経営者は能力が高い。答えは自分の中にある。忙しすぎて思考が整理されていないだけである。会計事務所側は、経営者が答えを必ず出せるという信頼感を持つことが重要である。

私たちが、財務をベースとしたコーチングによって提供している本質的な価値は何か。それは気づきである。気づきとは、今までとは違った視点で物事を見られるようになること、無意識から意識に変わることである。気づきを得られれば行動が変わり、行動が変われば結果が変わる。人間は外部からの刺激に反応するのではなく、自己の内発的動機づけに基づいて行動することが最新の心理学である。気づきを得て、主体的に目的目標に向かって動くことによって成果や自己成長はうまれる。気づきを得るためには、主観たる自分の思い込みから解放されることが必要となる。そのためには、財務数値という事実、第三者からの客観的な視点、思考プロセスに論理矛盾がないかの検証、人と話している自分の言葉を自分の耳で聞くことによる内省、が効果的であり、これが財務をベースとしたコーチングによってもたらされる。

財務をベースとしたコーチングのもう一つの本質的な価値は承認である。経営者は孤独である。経営者はお世辞を言われることはあっても褒められることはない。その経営者の悩みをとことん聞いて分かち合い、出した結論について背中を押して勇気を与える。その勇気が成果に繋がる。

シリコンバレーの著名CEOはエグゼクティブコーチングを受けている。Google、apple、amazonなどのコーチを務めたビル・キャンベルが有名であり、「一兆ドルコーチ」という書籍にもなっている。日本でもコーチングを受け始めたという上場会社の経営者の声も聞く。今後は中小企業においてもコーチングのニーズはますます顕在化してくるだろう。財務×コーチングで会計事務所は顧問先のCFOの役割を担える。

 

次回は、会計事務所が財務をベースとしたコーチングを事業化する際の留意点について述べたい。

 


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税理士法人Brothership代表 松原潤の経営コラム

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