経営支援型 税理士事務所  税理士法人ブラザシップ

ブラザシップコラム Brothership Column

経営ノウハウ

会計に強い会社は業績がいい!?

2021.05.27

279 views

長年会計の専門家として仕事をしてきて思うのは、「会計に強い会社は、業績が安定している」ということです。
特に昨今のような外部環境の劇的な変化、ネガティブに捉えられがちな環境変化があるときには、会計に強い会社は安定した成果を出していると感じます。

なぜ、会計に強いと業績がよくなるのか?

そもそも「会計」にはどんな機能があるのでしょうか。
会計とは、会社が経営上行う経済活動を記録することです。自分たちの商品をお客様に販売する活動は、売上として会計上記録され、お金が増えれば現金の増額として記録されます。
このような経済活動の記録が「会計」であり、それを集計したものが決算書(財務諸表)です。
逆に言うと、「会計」は決算書のもととなる記録なので、企業の経済活動を決算書から紐解く機能を持っていることになります。
例えば、売上が100万円決算書に計上されていたとします。決算書からは一体誰にいついくらで売ったものがどれくらいあるのかがわかりません。しかし、会計記録を見ると、すべての経済活動が記録されているわけですから、「A社に1個100円で30個、5月25日に売って15,000円現金で回収している。そしてB社には・・・」と、100万円の売上を作り出した要因を把握することができるのです。
この会計の機能を使うと何ができるのでしょうか?
会社が大きくなってくると、社長は会社でどのような活動が行われ、どんな問題が発生しているのか、細部まで把握することが難しくなります。
会計の機能を使うと、決算書等の財務データを見て、それを紐解くことで、会社の状況を細部まで把握することができます。
問題点にいち早く気づくことができ、それに対処できれば、大きく経営のかじ取りを間違えることも少なくなり、業績が安定する要因となるのです。

マネジメントと会計の関係

経営をしていく上で、会計はどのような場所でその機能を発揮するものなのでしょうか?
経営管理(マネジメント)の視点から、経営を整理したいと思います。
マネジメントには、さまざまな定義がありますが、「経営」や「管理」として訳されることが多いようです。
ドラッカーは「マネジメントの役割」として、次の3つを上げています。

  1. 組織が果たすべきミッションを達成する
  2. 組織で働く人たちを活かす
  3. 社会に貢献する

ミッション(経営の目的)を成就することがマネジメントの役割であり、それをもって社会に貢献することに企業の存在意義があると考えられます。また、経営の目的(経営理念)が壮大なものであれば、経営者だけで成し遂げられるものではなく、社員(組織で働く人たち)の協力は欠かせないでしょう。
ドラッカーのマネジメントの役割定義からもわかるように、経営はその目的、経営理念からスタートすることになります。
しかし、この経営理念はとても観念的なもの、解釈に幅があり、具体性に欠ける表現になりがちです。したがって、経営理念を掲げただけでは、具体的に経営上何をしたらいいかがわかりません。

図1:経営管理の視点から見たマネジメントの体系図

図1にあるように、経営理念から実践につなげていくには、より具体的に起こすべき行動が見えなければなりません。観念的なものを具体化するために、まず時間的な制約を設けていきます
これを「ビジョン」と定義します(図1参照)。
ビジョンも様々な定義がありますが、ここでは大枠の目標としてとらえています。5年先のなりたい姿を描くと経営理念が少し具体化されます。
そのうえで、戦略を描くことになります。戦略について、詳細を申し上げるととても深い話になるので、ここでは詳細割愛しますが、簡単に言うと「戦略とは何をし、何をしないかを決めること」です。
この戦略を立案する前に、現状分析をする必要があります。

「今立っている場所がわからなければ、梯子の掛け違いがおこる」

現状がどうなっているかを考えずに将来の戦略を考え実行することには、大きなリスクが伴います。
例えば、既存事業の活性化のため、多額の投資を要する設備を購入する戦略を立案した会社があったとします。その会社の現状を見たときに、資金繰りが詰まっていて既存事業から大きな赤字が出ていたとしたら、その戦略は正しいといえるでしょうか。さらに将来的にはその市場が縮小すると考えられているとしたら・・・
会社内外の現状を詳細に把握してから、戦略を立案し実行すべきだということはご理解いただけると思います。
そして現状分析をするために必要なのが、会計のスキルです。
会社の現状がどうなっているのかを知るには、財務データを紐解き、数字を使って現状を把握する必要があります。そのためには、会計の技能は必要不可欠です。

「会計」のもう一つの機能

会計には現状分析を詳細に行い、問題点を洗い出す機能があります。これは、マネジメントの中のとても重要な機能と言えるでしょう。
この機能がなければ、会社は梯子の掛け違いを起こし、多大なリスクのある戦略を取りかねません。実際に現状分析を疎かにし、致命的なダメージを受けている中小企業を多く見てきました。
この機能だけでも、会計を経営に使うことには大きな意味がありますが、もう一つ重要な機能が「会計」にはあります。
それは将来を描くことができる機能です。

「会計」を使って将来を描く

戦略を立案しやることが決まったら、具体的に誰がいつ何をどうやって実行するのか計画を立てる必要があります。まずは、細かいところからではなく、「中期」(3年~5年後)の大枠の計画を作っていきます。
その後、単年度計画を立て、日々の実践につなげていきます。
会計の技術を使うと、ビジョンを数値目標に落とし込み、戦略を前提とした数値計画を作ることができます。これにより、経営者はより具体的に会社の理想の将来の姿をイメージすることができます。

中小企業はどうやって会計に強くなればいいのか?

会計に強くなると経営がよくなる(=業績がよくなる)イメージは何となく持っていただけたでしょうか。
それでは、どうやったら会計に強い会社になれるのでしょうか
中小企業では、大企業のように社内に会計士などの専門人材を置くことは、コスト的にも難しいでしょう。
また、経営者はもともと営業や技術系の仕事をしていた人が多く、会計の専門家(例えば経理出身)が経営者になることは珍しいと思います。
社内に会計に強い人がいない状況で、経営者にもその強みがないとしたら、中小企業が会計に強みを持つことは不可能なのでしょうか?
いいえ、不可能ではありません。会計事務所を活用することで中小企業も会計の強みを発揮し、安定した経営をすることが可能になります。

会計事務所が果たすべき役割

上記で述べてきた通り、会計は経営(マネジメント)上のリスクを抑え、明るい将来を描き実現するための必須スキルです。この技術を組織に備えていない状況で経営をしていることは、コンパスを持たずに大海原に出ていくようなものです。
会計事務所は、会計の専門家が集まる組織です。このような中小企業の財務リテラシーの低さを補う機能を有しているといえます。また、会計事務所は、全国に約2万5千事務所もあり、中小企業の99%が税務業務をアウトソースしています。
これは一種、社会インフラとしての機能を持っていると言えます。この機能を発揮すれば、多くの中小企業に会計の重要性を認識してもらい、経営に役立ててもらえると考えています。
しかし、現状の会計事務所は、税務業務を専門業務としているため、会計を税務申告に使うことを前提として業務を設計しています。
会計を使った経営の支援をしている会計事務所は、まだまだ少ないのが現状です。

積極的に会計事務所を活用する

会計事務所の人材は、税務の視点が強くても会計のプロであることに変わりはありません。
社長が自ら会計の重要性を訴え、積極的に情報を取りに行く姿勢が重要だと思います。意図が伝われば、本来業務である税務業務の範疇を超えた支援を期待できるかもしれません。
また、最近は、経営支援をサービスとして謳っている事務所も増えてきているように思います。そのような事務所にセカンドオピニオンとして入ってもらうのも有効でしょう。
どちらにせよ、会計に強くなることが経営をよくするとしたら、経営者はしがらみを振り払い積極的に会計の機能を経営に活かす手立てを考えるべきです。

経営者自らが会計に強くなる

先日、素晴らしい成果を出されている経営者が「貸借対照表はデザインするものだ」とおっしゃっていました。
貸借対照表は、会社が創業してから現在に至るまでの結果が集約されている財務諸表です。1年間の売上や利益などが記載されている損益計算書と違い、今までの活動のすべてが貸借対照表から読み取れます
つまり、貸借対照表は短い期間で作られるものではなく、創業からの毎日の積み重ねが表現されるものであり、まさに経営者が意図的にデザインすることができるものなのです。
この貸借対照表の見識の詳細については別記しますが、このような見識のある経営者は、会計に強いと言っていいと思います。
その経営者に「どうやって会計に強くなったのか」とお聞きしたところ、普段から実務を通して会計の視点をもって経営をしているということと、当初は書籍で勉強したり、わからないところを税理士に教えてもらって勉強していたとおっしゃっていました。
経営者が専門家のように、細かい会計の知識を得る必要はないと思います。しかし、自社の経営に活かせるレベル、また専門家が言っていることが理解できるぐらいの知識は身に着けるべきでしょう。
そのためには、経営者が会計を学ぶ機会を作り、見識を高めてから実務に活かしていくことが効果的だと思います。
実際、私たちも「BrothershipCollege」というサービスを立ち上げ、経営者が会計を学ぶ場を作っています。この講座の受講生の方々は会計を学び実務に活かすことができるようになり、大きな実績を出されている経営者の方も多くいらっしゃいます。

未来の会計事務所のかたちとは?

私たちブラザシップのビジョンは、「会計事務所の新しい未来をかたちづくる」です。
日本の中小企業経営者は欧米と比べて、会計の基本的知識(財務リテラシー)が不足していると思います。
欧米では起業する前に会計について大学院等で学ぶことが当たり前だからです。日本では、大学で真剣に会計を学んでから経営者になることは稀でしょう。
日本の経営者に会計を学ぶ機会がないことはとても残念なことです。経営者としてのレベルはとても高いのに、必須である会計を知らないために苦境に陥る経営者がいる状況を何とかしたいというのが私たちの願いです。
日本には会計事務所という会計のプロ集団が社会インフラのように各地に存在しています。
会計事務所が経営支援の機能を発揮し、中小企業の財務リテラシーの向上に寄与することが私たちの願いであり、そのような会計事務所が未来の理想的な会計事務所のかたちの一つではないかと考えています。

コラム一覧に戻る