経営支援型 税理士事務所  税理士法人ブラザシップ

ブラザシップコラム Brothership Column

会社設立

会計事務所の選び方

2021.05.31

537 views

創業する前、もしくは創業したばかりの経営者の方は、「どんな会計事務所を選んだらいいんだろう?」と思われると思います。
税制の複雑さや会計業務の煩雑さを考えると、中小企業では税務業務や経理業務の一部を会計事務所にアウトソースすることが現実的です。実際に中小企業の95%以上が会計事務所と契約し、業務を委託しているといわれています。
また、会社のステージが変わり、新しい会計事務所と契約しなおそうとしている方も次の会計事務所の選び方に迷われる方は多いのではないかと思います。
それでは、どのような会計事務所と付き合うとよいのでしょうか?
答えは、「経営者の求めていることによる」ということになると思います。
「すべての会社は絶対ここに頼んだほうがいい」という事務所はないということです。

目次

会計事務所の種類

会社によって頼むべき会計事務所が違うとすると、どのような会計事務所があるのか知る必要があると思います。
会計事務所はそれぞれ様々な特徴を持っています。その特徴を見て、自社のニーズにあった会計事務所を選ぶといいでしょう。
代表的な特徴をあげると下記のような事務所があると思います。

  1. 所長先生がすべての顧客対応をする個人事務所
  2. ITに強い若手所長の経営する事務所
  3. 古くから地域に根差して活動している中規模事務所
  4. 特定の業種業界(医療、飲食など)に強い事務所
  5. 特殊業務(相続税申告、税務調査対応、経営・財務コンサルティング、M&A、IPOなど)に強い事務所
  6. 大手会計事務所

それぞれの事務所と付き合うメリット・デメリット

冒頭に申し上げた通り、会社によってマッチする会計事務所は異なります
業種、業態や会社風土、経営者の考え方によって変わりますし、会社の成長のステージによっても変わってきます。
中小企業にとって、会計事務所は身近な経営の相談役であり、マッチするところを選ぶことは、重要な経営意思決定になると思います。
下記に各特徴別の事務所のメリットデメリットをまとめました。自社に合う会計事務所を慎重に選ぶための基準にしていただければと思います。

1.所長先生がすべての顧客対応をする個人事務所

資格保有者が所長先生のみで、あとはパートタイマーの方で組織される会計事務所です。会計事務所は全国に約2万5千事務所あり、1事務所あたり平均従業員数は5名ほどといわれています。このような形態の会計事務所の数は多く、業界では一般的な組織形態といってもいいと思います。

【メリット】
常に所長先生が対応してくれるという安心感があります。先生によっては、税務や経営の相談だけでなく、家族の相談にも乗ってくれるなど、親身になって支援してもらえることも期待できます。
所長先生も経営者であるため、経営者の気持ちをよくわかってくれるというメリットもあります。

【デメリット】
そもそも所長先生と考えが合わないと信頼関係が築けず、支援を期待できないどころか、経営にとって悪い影響を受けてしまう可能性があります。契約前に考え方をよく聞いて自社と合うかどうか見極めたほうがいいでしょう。
また、素晴らしい先生であれば、それだけ人気も高く、忙しいので時間を取ってもらえなくなる可能性があります。契約関係もしっかりとしておらず、契約書がないこともあり、ウェットな関係が築ける反面、十分なサービスが得られなくなる可能性があります。

【総論】
特定の先生とウェットな人間関係、信頼関係をもってサービスを提供してほしいと思われるなら、こういった会計事務所がいいでしょう。その場合は、先生が忙しくなって、時間を取ってもらえなくなることがないように、最初に取り決めておく(担当を変えないことなど)必要があると思います。
個人事業主創業期でわからないことが多い時には、このような会計事務所とお付き合いし、会社が成長しステージが変わったら別の会計事務所にお願いするという選択もいいかと思います。

2.ITに強い若手所長の経営する事務所

ITやテクノロジーの進化により、最近増えてきている事務所です。
所長が若手でない場合でも、若手幹部がITリテラシーを高めている中規模事務所もあります。AI型クラウド会計ソフトを中心に中小企業のDX化に見識のある支援を期待できます。
※中小企業のDX化の詳細についてはこちらの記事をご覧ください!
https://www.brothership.co.jp/column/2021/05/column-1195/

【メリット】
ITリテラシーが高く効率的に業務を行ってくれるため、スピード感のある支援が期待できます。若手が対応してくれるケースが多いため、対応が早いことが多いです。AI型クラウド会計ソフトに対応しており、記帳も自動で行われることから、報酬も割安になることが多いです。

【デメリット】
自社のITリテラシーがある程度高くないと、サービスメリットを感じられない可能性があります。このような特徴を持つ事務所は、創業間もなく税務業務のノウハウが少ないことも多いです。

【総評】
若手経営者スタートアップでは、このような会計事務所とお付き合いするのがマッチするかと思います。しかし、このような事務所では急成長しているところも多く、サービス品質を保てない事務所もあります。最近では、中堅事務所でもテクノロジーを積極的に取り入れているところも出てきているため、税務品質が心配である場合には、そのような事務所に頼むのもいいでしょう。その場合には、報酬は少し高めになると思います。

3.古くから地域に根差して活動している中規模事務所

創業が長く地域性が高い2,3代目の所長先生が経営しているような事務所です。地域に根差しているため、同じく地域に古くからある企業をクライアントに持っていて安定した経営をされているところが多いです。
組織の体質は古いことが多く、先進的な技術の活用が遅れている事務所も多いです。

【メリット】
創業が長く、税務業務のノウハウがしっかりしているため、税務申告業務については信頼性が高いといえます。職員数も比較的多く、専門性も高いのでサービス品質は高く維持できていることが多いです。
親身になってくれる職員も比較的多く、担当者といい人間関係が築きやすいという特徴があります。
地域に根差しているため、その地域の経営者ネットワークを持っていることも多く、優良企業とのマッチングや人脈作りを手伝ってくれる可能性があります。

【デメリット】
古い体質であるため、新しいことを取り入れるマインドが低いことが多いです。そのため、変化を伴う提案は少なく物足りなさを感じるかもしれません。
ITを積極的に取りれいているところも少ないため、効率性には欠けることがあります。いまだに紙ベースでの申告や報告をするところも多く、ITリテラシーの高い経営者にとっては付き合いにくいかもしれません。
最近では、職員の離職の多い事務所もあり、繁忙になっていることもあります。そのような事務所では、上記のようなメリットも享受できない可能性があるため、注意が必要です。

【総評】
とにかく税務会計業務のサービスをのみ求めている経営者にはマッチする事務所だと思います。品質も比較的高いことが多いため、安心して任せることができます。
税務+αのサービスを期待している経営者やITリテラシーの高い経営者には合わないでしょう。
税務会計の業務を丸投げして経営に集中したいというニーズにもマッチするかもしれません。
ただし、この特徴を持つ事務所は、所長先生の考え方や経営手腕によって、サービスレベルの差が相当程度あるので、事務所ごとに個別に評価が必要だと思います。

4.特定の業種業界(医療、飲食など)に強い事務所

特定の業種のノウハウを持つ事務所です。
特に税務や会計だけでなく、経営全般や業界動向などにも明るいことが多いです。医療や飲食などに強みを持つ事務所がありますが、最近では特化している事務所は少ないように思います。特定の業種のお客様が比較的多いということはありますが、特化はしていない事務所が多いです。

【メリット】
業界特有の情報を提供してもらえたり、業界の特殊性に沿ったサービス提供を受けることが期待できます。また、同業他社の動向等を守秘義務を侵さない範囲内で入手できる可能性があります。
その業界の事情等を把握しているため、スピード感のある対応が期待できます。特化しサービスを標準化することで低価格化を図っている事務所もあります

【デメリット】
特殊な業種以外は、業界独特の事情に沿ったサービスというものが特になく、業種特化型事務所に頼むメリットがない場合があります。
価格設定に失敗し、低価格化による採算悪化により品質が低下している可能性もあります。

【総評】
医療系等、限られた業種以外の特化事務所は選択する価値があまりないように思います。

5.特殊業務(相続税申告、税務調査対応、経営・財務コンサルティング、M&A、IPOなど)に強い事務所

特殊業務に強い、または特化している事務所です。
最近はこのような事務所は多いように思います。特に相続税特化型の事務所は増えていると思います。このような事務所は、会社の顧問税理士とは別にセカンドオピニオンとして契約することも考えられます。

【メリット】
特化している業務に関しては、専門性がかなり高いので、特殊業務を依頼したいのであればマッチする事務所だと思います。
顧問税理士との契約を解除しなくても、セカンドオピニオンとしてかかわってくれる事務所も多いので、契約しやすいというメリットもあります。

【デメリット】
特殊業務に対するサービスレベルが高い分、その業務についての単価は高くなります。また、特定の業務以外はやってもらえないこともあり、網羅的に税務業務をお願いできない場合があります。

【総評】
特殊業務の支援が必要な時にセカンドオピニオンとして入ってもらうのがいいでしょう。
また、コンサルティング業務に強みのある事務所で、税務業務もしっかり見てくれるのであれば、自社の成長に応じて税務顧問に+αでコンサルティングを依頼することもできるでしょう。税務業務との連携で効果性の高いコンサルティングサービスの提供が期待できます。

6.大手会計事務所

BIG4系列の会計事務所など数百人以上の従業員数を抱える事務所です。
大企業をクライアントに持ち、高度な税務に対応できる人材をそろえています。

【メリット】
大企業を前提としたサービスを提供でき、国際税務など高度税務にも対応できます。担当者も優秀な人材が多く、サービスレベルは高いといえます。
税務以外のサービスも充実しており、さまざまな支援を受けられます。

【デメリット】
中小企業には適用されない税制の部分の深い見識を持っているので、過剰品質と言えるかもしれません。また、一般的な会計事務所と比べると報酬がかなり高くなります。

【総評】
企業規模が大きいか、難易度の高い税制が適用されるような業種でなければ、中小企業にはあまりマッチしないかもしれません。

自社にマッチした会計事務所とは?

上記の通り、会計事務所には様々な特徴があります。
複数の特徴を併せ持った事務所もあります。
例えば、弊社ブラザシップは、上記のうち、「ITに強い」「若手が多い」「特殊業務(特に経営コンサルティング)に強みがある」という特徴を併せ持っています。中小企業に経営管理の仕組みを根付かせることで、お客様の財務リテラシーを上げることを重視したサービスを展開しています。弊社は中規模事務所で創業も長い事務所ですが、若手を多く採用しITに力を入れ先進的なテクノロジ―を積極的に取り入れています。それにより、上記であげたデメリットを軽減し、メリットをより際立たせるように経営努力をしています。
他の事務所においても、複数の特徴を併せ持つ素晴らしい事務所が多くあります。
会計事務所を選択するにあたって重要なことは、冒頭にも記載した通り、自社の業種・業態、組織風土、経営者の考え方などが合うかどうかです。
会計事務所は身近な相談役として大変重要な役割を担うことができる存在です。上記を参考にしていただいて、自社に合う事務所を選んでいただくことをお勧めします。

コラム一覧に戻る