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ブラザシップコラム Brothership Column

経営ノウハウ

中小企業に有効なマーケティングとは?

2021.06.18

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マーケティング」がビジネスにおいて重要だといわれていますが、その定義具体的な内容について整理して理解できいる人は少ないように思います。

「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」

全米マーケティング協会

「マーケティングの役割は、販売の必要性をなくすことだ。」

ピータードラッカー

様々な定義があると思いますが、代表的なものはこの2つでしょうか。
個人的には、ドラッカーの定義がわかりやすくてしっくりきます。それでは、「販売をなくす」とはどういうことなのでしょうか。

マーケティングとセリング(営業)の違い

マーケティングを語るときに、整理しなければならないのは、営業(セリング)との違いです。

図1:マーケティングとセリングの違い

上記に、販売フローにおけるマーケティングと営業(セリング)の違いをまとめました。
まず、スタートが違っています。セリングが自分たちが作っているもの(既存製品)を売ることを考えることから始めるのに対し、マーケティングは市場・顧客ニーズがどこにあるのか、ニーズにあった商品を提供できないかを考えます。前者、セリングの考え方をプロダクトアウトといい、後者、マーケティングの考え方をマーケットインと言います。

セリングの焦点は、今日・明日の売上であり、短期的な成果を重視します。これに対し、マーケティングは、中長期の視点に立って売れる仕組みを作ることで、永続的な販売を可能にすることを考えます。したがって、セリングがとにかく動いて短期的な現状の売上を上げることを重視し、売上数量を成果とするのに対し、マーケティングは考えて動くことを重視し、継続的に成長できるような良好な顧客との関係性を築くことを成果とします。

市場調査や仕組みづくりが必要になるため、マーケティングは手間がかかり成果創出も遅れることから、短期的にはセリングを重視することが多いと思います。
しかし、マーケティングの仕組みがいったん出来上がると、マンパワーを使わず継続的に成果を創出できるため、中長期でみると絶大な効果があります。

なぜ、中小企業はマーケティングではなく営業を重視するのか?

マーケティングには絶大な効果が期待できますが、中小企業においてはマーケティングよりもセリングに力を入れる傾向にあります。これには以下のような理由があると思います。

  • 短期的な成果を重視する傾向にある。
  • マーケティングの概念を知らない。やり方がわからない。
  • 昔からやっている営業のやり方を変えられない成功体験がある。
  • コストがかかると思っている。
  • 難易度が高く、対応できる人材がいない
  • 高度なデジタル技術が必要だと思っている。

中小企業においても、マーケティングを実施することによる効果は高いと思います。しかし、上記の理由からセリングが重視される傾向にあるのは大変もったいないことだと思います。中小企業が実施できるマーケティングの形はないのでしょうか?

中小企業が取るべきマーケティング施策

まず、マーケティングを難しく考えすぎないことだと思います。
大企業が行うような大規模なマーケティング施策をイメージすると、中小企業では難しいと思われるかもしれません。しかし、マーケティングとはそもそも「販売の必要性をなくす」ために行われるものです。多額のコストや難易度の高い施策ばかりではありません。十分に中小企業でも実施できる施策は多くあります。

ある製造会社の事例

ある製造業を営まれているお客様のお話です。
その会社は、昔から大手企業1社を得意先としており、ほかに得意先はありませんでした。10年ほど前まではそれでも工場はフル稼働。生産が追い付かないほど注文がありましたが、徐々に注文が減り、私たちが入らせていただいた時には、全盛期の3分の1ほどの売上しかありませんでした。
このまま得意先1社の注文を待っていたのでは、いずれ会社が潰れてしまう。危機感を感じた社長は、営業活動をすることを決めました。しかし、今まで営業なんてやったことがありません。そもそも、頭を下げて営業をするのは職人気質の社長には耐えがたいものでした。

このような会社は製造業においては多くあります。バブル期に全盛であった会社に多いように思います。昔は、物を作りさえすれば売れた時代があったということです。そして、このようなケースでは営業にネガティブな印象を持っている社長も多いです。

「社長、まずは材料の仕入先に声をかけてみませんか?御社の製品を買ってくれそうな会社を知っているかもしれません。」

私たちからのアドバイスを誠実に受け止めてくれた社長は、材料屋さんに声掛けをしてくださいました。その結果、取引が成立すれば材料をその業者から買うことを条件に、2,3社お客様を紹介してくれ、その中で1社取引をすることになりました。その後も定期的に紹介があり、複数社と取引をすることができるようになりました。

これは、紹介による営業、「間接営業」による効果です。直接的にお客様になりうる会社に営業に行くと、「お願いします。買ってください。」という「お願い営業」になりやすいですが、それでは社長が懸念されていたようなこちらの立場を低くする関係性Lose-Win(こちらが負けて相手が勝つ)の関係になってしまいます。しかし、このように営業であれば、紹介者を含めWin-Win(両方勝つ)の関係、材料屋さんも含め「三方良し」の関係を築くことができます。

また、紹介をしてもらいやすくするために、この会社の強みを簡単にまとめた製品紹介のペーパーを材料屋さんに渡しました。当初、「御社の強みは何ですか?」とお聞きしても、「うちは普通の製品を言われた通り加工しているだけだから、強みなんてないよ」と社長はおっしゃっていました。しかし、創業古い会社で、大手上場企業がずっと取引を続けている会社です。強みがないはずはありません

「社長、得意先の担当者に御社と取引している理由を聞いてみてください。きっと強みがわかりますよ。」

思った通りでした。ある特殊な技術を持っていたことが、取引を継続していた理由でした。社長はこの技術を当たり前のものだと思っていたようです。実は、この技術を持っている会社は全国でも数社しかなかったようです。

その後、この強みがあることを知った社長は、ものづくり関係の展示会にその製品を出展し、ニーズがないか探ることにしました。小さいブースだったにもかかわらず、注目を集め遠方の会社も含め、複数の得意先を作ることに成功しています。
これらの取り組みにより、会社は大きな成果を得、社長、そして従業員も自信に満ち、素晴らしい成長を成し遂げています。

マーケティング思考の価値

この事例から何が読み取れるでしょうか?
営業をしたことのない社長が、なぜ売上拡大に成功したのでしょうか?
マーケティング思考によって行動を起こしたからだと思います。

まず、材料屋さんに紹介を促すことで、市場を調査しています。自社の製品にニーズを持っている潜在顧客がいるのか探ってもらったわけです。そして、強み、自社特有の存在価値を整理し、展示会で広く知ってもらうことで、よりニーズを持った得意先を見つけることに成功しました。今では、これらの取り組みを仕組化し、定期的に行うことで成果を継続して出すことができるようになっています。もともと厳しい大手企業の品質検査を通っているわけですから、製品の品質は高く、潜在ニーズを持ったお客様ばかりなので、顧客満足度は高くリピート率を高く保持できています。

これはまさに、上記「図1:マーケティングとセリングの違い」におけるマーケティングのフローを体現しているといえます。

この会社の事例で出てくるマーケティング活動は、一般的にイメージされるようなマーケティングとは少し違うのかもしれません。しかし、マーケティングが「販売をなくす」ことを目的とするならば、それに適った活動であり、秀逸なマーケティング活動と言えます。
中小企業において行うべきマーケティング活動は、このようなものではないかと考えています。

難しく考えずに、お客様のニーズを探り、それに合った商品を考え、共感してくれる協力者を探す。そして、それを知ってもらう活動を広げていく。これが、マーケティングの神髄ではないかと思います。

マーケティングとテクノロジー

昨今では、営業よりもマーケティングが重要視されることが増えてきました。
これには様々な理由があると思いますが、その一つがテクノロジーの進化によるマーケティングの進化によるものだと思います。
顧客ニーズをSNSで簡単に探ることができたり、ニーズを持った顧客にダイレクトに情報を発信することも簡単になりました。また、SFA、CRMなどのマーケティングツールも多く出ています。代表的なツールには下記のようなものがあります。

  • Sales Cloud(Salesforce)
    https://www.salesforce.com/jp/products/sales-cloud/overview/
    世界15万社以上という圧倒的なシェアを誇るセールスフォース社のSFA/CRMツールです。営業担当にとって使いやすく、作業負荷が少ないことをコンセプトに置いていることです。
  • Knowledge Suite
    https://ksj.co.jp/knowledgesuite/
    SFAとCRMのオールインワンツールとして支持を集めています。その特徴は、普段通りに営業日報を作成するだけで、必要なデータを抽出し、営業活動に必要なデータを可視化してくれる点です。
  • Sansan
    https://jp.sansan.com/
    名刺を管理することができるアプリです。SFAというわけではありませんが、マーケティングツールとして使うこともできます。
  • kintone
    https://kintone.cybozu.co.jp/
    こちらもSFAやCRMのアプリではありませんが、さまざまなアプリを簡単に自作できるアプリです。顧客管理などのアプリを作ることも可能で、中小企業にあった機能に絞ってマーケティングツールを自作できます。

その他にもたくさんのツールが出ています。自社にあったものがあれば、使ってみるのも一つです。
しかし、このようなテクノロジーはマーケティングをより効果的にするためのものであり、大切なのは上記の事例でご紹介したようなマーケティング思考を経営者が持つことだと思います。逆に言えば、ツールを使ったからといって秀逸なマーケティングができるわけではありません。あくまで補完するものとしてデジタルツールをとらえていただいたほうがいいでしょう。

中小企業を取り巻く環境は、今後さらに加速度的に変化していきます。しかし、どのような環境になっても変わらない普遍的な考え方があります。マーケティング思考もその一つでしょう。はやりすたりに踊らされることなく、本質を見極めて「マーケティング」を経営に取り入れていただくことをお勧めします。

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