経営支援型 税理士事務所  税理士法人ブラザシップ

ブラザシップコラム Brothership Column

資金調達

中小企業の資金調達

2021.06.29

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事業に必要な資金をすべて自己資本でまかなえれば、資金調達の必要はありませんが、成長を望む場合、現実的にそれは難しいでしょう。
外部から資金を調達する必要がありますが、どのような方法があるのでしょうか?大きく分けると下記の3つになると思います。

  1. 金融機関からの借入
  2. 出資を受け入れる
  3. 親族、知人、友人からの借入
  4. その他ノンバンクからの借入

今回は、これらのうち、金融機関からの借入について詳しく見ていきます。
他の資金調達方法については、後日コラムで触れるつもりですが、基本的に中小企業はほぼ100%金融機関からの借入で資金調達するため、ここを押さえておけば問題はないと思います。


「2.出資を受け入れる」についても、今回は詳細記載しませんが、議決権の問題があるため注意が必要です。「返さなくていいお金」ではありますが、会社の所有権を奪われる可能性がありますので、出資を受ける場合には有識者への相談をしてから慎重に対応する必要があります。

目次

金融機関からの借入

一般的な資金調達の方法は金融機関からの借入になるでしょう。
金融機関借入を利用するメリットは、他の手法と比べ、比較的利用しやすく、さまざまな融資制度が整備されている点が上げられます。また、借入の手続きを通じて、事業に対するアドバイスも受けられることがあります。
金融機関は借入以外にも、日々の決済で利用することになります。身近なパートナーとして金融機関とお付き合いする価値は大きいと思います。

金融機関には様々な種類があります。会社の規模や状況に応じて選ばれるのがいいでしょう。それぞれの特徴について下記にまとめます。

  • 都市銀行
    メガバンクと言われる金融機関です。状況によっては大型の融資が可能であり、担当者も優秀なことが多いです。
    しかし、小口の融資は担当者がつかないこともあり、中小企業には少し敷居が高いように思います。親身な対応を期待する場合には、下記の地方銀行をお勧めします。

  • 地方銀行
    中小企業ではメインバンクの筆頭になるのではないかと思います。地域性がありますので、エリアによって強い地方銀行が変わります。本店所在地のエリアに強い地方銀行を選ぶといいと思います。
    担当者も親身に対応してくれますし、マッチングサービスなど、中小企業向けの経営支援サービスも充実しています。

    いわゆる第一地銀と言われるような大手地銀と中小の地銀を比べると、融資のスケールが違いますので、こちらも注意した方がいいでしょう。必要な融資ニーズを満たす規模の銀行とお付き合いするのがいいと思います。

  • 信用金庫
    親身に対応してもらえることが一番のメリットです。中小企業ではメインバンクにしている会社も多くあります。
    地域性が高く、何かあると担当者が直接出向いてくれて対応してくれます。小切手の決済や定期の預かりなど、いまだに出向いてくれてアナログで対応してくれるところもありますので、ウェットなお付き合いをしたい方には合うと思います。

    しかし、大型融資には対応できないことも多く、支店長決裁の枠も上記銀行に比べれば限られるため、会社の成長に応じて付き合い方を変える必要があると思います。
    また、資金繰りが行き詰まるなど、ピンチの時には最後まで応援してくれるイメージが個人的にはあります。これは、上記銀行のように上場企業ではなく、信用組合の組織形態をとっているので、必ずしも営利目的で経営をしていないからだと思います。ミッションが少し違うということですね。

  • 政府系金融機関
    日本政策金融公庫が代表的な政府系金融機関です。
    国の制度において中小企業に有利な融資制度があります。創業融資の特別な商品もあり、利用しやすいのが特徴です。
    日本政策金融公庫には、国民生活事業課中小事業課があり、前者が創業融資などの小口融資、後者が少し大きめの融資に対応してくれます。

    様々な融資制度がありますので、詳細はHPを確認されるといいと思います。
    政府系ですから、営利目的がありません。お得な融資商品も多くありますので、一度調べられることをお勧めします。

金融機関とのお付き合いの仕方

黒字倒産」という言葉をお聞きになったことがあると思います。会社は利益を出していても「お金」が枯渇したら倒れてしまいます。これは当たり前のことだと思われると思いますが、意外に利益を出していても資金繰りに困っている会社は多くあります財務に強い中小企業が少ないためだと思います(参照:コラム「会計に強い会社は業績がいい!?」)。


会社にとって資金を潤沢に持つことは、経営の安全性の面からとても重要なことです。したがって、金融機関との良好な関係はとても重要になります。

それでは、どうやって信頼関係を築けばいいのでしょうか。まずは、メインバンクを選定することが重要だと思います。


会社によっては、たくさんの金融機関とお付き合いがあり、それぞれ同じぐらいの融資残高、担保も均等に入れているという会社が多くあります。金利交渉などを有利にするために、多くの金融機関を競わせるようなことをしている場合に見られる状態です。
これは、あまりお勧めできる状態ではありません。資金繰りが苦しい時や大型の投資資金が必要なとき、どの金融機関にお願いすべきか選定が難しくなります。
金融機関側もメインバンクであるという認識がないと、積極的に助けるような動きをしたり、リスクを取りに行くことを躊躇します。


3行から5行ぐらいの金融機関とのお付き合いにとどめ、それ以上増やさないほうがいいでしょう。その中でメインバンクを選定し、シェアを高くしておくことをお勧めします。

また、上記のような金利交渉を積極的にされるような会社では、金融機関担当者の扱いを軽く考えている経営者も多くいます。担当者も人間ですので、無下な扱いをされれば、困ったときに助けたいとは思ってくれません。担当者の心象も融資決定の大きな要因となります。
過度にもてなす必要はありませんが、気持ちよくお付き合いができるような配慮は必要でしょう。実際に担当者と喧嘩して折り返し融資が出なかったという事例も聞きます。

余裕がある時に返済実績を作っておく

金融機関も慈善事業で融資をしているわけではありません。融資したお金を確実に回収できるか否かを重視し、信頼できる先か判断しています。

したがって、重要なことは融資を受け返済をした実績があるということです。
これは、事実として「借りたお金を返した」という実績ですので、信用が高まります。
この実績を作るために、資金が潤沢にある場合であっても、戦略的に融資を受けておくと、困ったときに緊急的な融資にも対応してくれるなど安全性の面で有効だと思います。

金融機関の信頼を高める経営計画書

事業性融資をすべきとの風潮もあり、金融機関では将来の事業成長の可能性によって融資をすることも増えてきました。
また、経営管理体制がしっかりしている会社は、確実に利益を出し返済が滞るようなことも少ないため、金融機関は定性的な評価要因として重視します。
これらのことを鑑みると、融資の場面においても、経営計画書の重要性は増していると考えます。

経営計画書の作成においては、下記が重要な要素となります。

  • 経営者自らが関わって作っていること
  • 融資のために作っているのではなく、毎期定例的に作られていること
  • しっかりと経営計画書が運用されていること
  • 戦略があり、計画に反映されていること
  • モニタリングがされていること
  • 経営計画発表会など、経営計画書が公開される場があること

詳細については、コラム「絵に描いた餅にならないための経営計画書の作り方」を参照いただければと思います。
特に融資において大切なことは、経営者自らが経営計画書の作成に携わっていることです。つまり、金融機関から経営計画書の説明を求められたときに、経営者が説明できないようでは、金融機関からの信頼は得られないということです。

会計事務所ができること

金融機関からの借入の場合、新規でいきなり窓口に行くとあまりいい反応はされません
会計事務所、特に経営のご支援に強みを持っている事務所は、多くの金融機関とのお付き合いがあり、お互いに紹介しあう関係を築いています(参照:コラム「会計事務所の選び方」)。

私たちもそのような会計事務所ですが、金融機関の担当者の方に聞くと、やはり会計事務所からの紹介は安心できると言われます。
ただし、資金が枯渇していたり、急な資金ニーズがある場合に会計事務所から強く融資依頼されると、粉飾を疑うなど、あまりいい印象は受けないそうです。

私たちがお勧めするのは、上記で記載した通り、資金が潤沢にあるときに信頼関係を築いておく方法です。資金ニーズが顕在化する前に、金融機関をご紹介することにしています。顔合わせをしておけば、資金が必要になったときに、私たちを通すことなく、スピーディーにお客様から金融機関に連絡することができます。資金ニーズがなくても、返済実績を作るために融資を受ける手もあるでしょう。

また、経営計画書の策定や経営管理体制の構築についても、会計事務所によっては支援してくれます。

ある程度の財務に対する見識がないと経営計画書(特に数値計画)を作るのは難度が高いので、作成支援を依頼されるといいでしょう。ただし、代わりに作ってもらっても意味がないので、戦略も含めて一緒に考え、専門的な部分のみ代行してくれるところがいいと思います。

また、経営会議や経営計画発表会など、経営管理体制(PDCAサイクルの構築)についても、会計事務所のアドバイスを受けることをお勧めします(参照:コラム「中小企業の経営会議のあるべき姿」)。

無借金経営でも経営の安全性を高く保てるような潤沢な資金のある会社は、それほど多くないと思います。金融機関との付き合いは大変重要だと思います。

ただし、借入により潤沢な資金を手に入れた場合に、経営管理体制が脆弱だと、不必要な投資、場合によっては散財に資金が使われることがあります。
上記のような財務戦略(金融機関との賢い付き合い方)をするには、経営管理体制の構築をセットで行うことが必須になります。

資金繰りに困らない経営をするためには、金融機関との関係を良好に保ち、併せて経営管理体制を秀逸に構築していくことが重要です。ぜひ、この点について、会計事務所にご相談されることをお勧めします!

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